【プロオタク先輩インタビュー】第2回 和田晃一さん(ディエスコンサルティング株式会社代表取締役)後編
- プロオタク講座事務局
- 2019年5月4日
- 読了時間: 6分

プロオタクとして活躍する先輩に、きっかけやら醍醐味やらコツやら訊きまくるインタビュー。
今日は、本講座の第2回「『好き』をあきらめない 3年後の自分をイメージする事業計画書を書こう」講師の和田晃一さん(ディエスコンサルティング株式会社代表取締役)の後編。
本が好きすぎて会社を辞め、読書の成果を基にコンサルティングを行なう「ディエスコンサルティング株式会社」を設立した経歴を持つ。
好きを大事にして人生を切り拓いてきた自らの人生を重ねつつ、「『好きを仕事にすること』のススメ」を語ってもらった。
本が好きすぎて辞書まで読んで夫婦喧嘩
――本はどれぐらい好きなんですか?
和田「家で読む本がなくなって辞書を読んでたときは、妻に変態扱いされましたね。
結婚して2度目の夫婦喧嘩はそれでした(笑)。
家に帰ってきて、読んでない本がないなと思って、辞書でも読むかなと思って。岩波の辞書が大好きなんで。
たまたま開いたところに『くりくり』って言葉があって、『【副詞】小さな丸いものが速く回るさま』って書いてあって。『すげえ、そうなんだ!』って(笑)。
嫁に言ったら『いいから早く寝なさい』って(笑)。
これは変態です(笑)。」
――幼少のころから、本をいっぱい読んできた?
和田「そうですね。読まなかったのってサラリーマン時代の11年間なんですよ。
仕事が忙しくても読むんですけど、そのときは読書に対する欲求も浮かんでこなくて。
独立起業したときに、僕を誘ったパートナーの言葉で、僕にとってずっといつまでも響いていたのが、『おまえさ、自分たちの会社だったら、経費で本が買えるんだぜ』。
『マジ?』って(笑)」
本に書いてある答えを実際にやってみる
――お金のこともあるけど、読書が自分の仕事だって認められた嬉しさですよね。
和田「『本ばっかり読んだって何の役にも立たないだろ』って言われたのに、反発心みたいなのがあって。
たとえば本を読むと、役立ちそうなことが書いてあるじゃないですか。
でも会社で、その役立ちそうなことを実際にやるっていう人はほとんどいないんですね。
『本のここに答えが書いてあるからやろうよ』って言うと、『そうは言ってもさあ』って意見が出てきて結局できないんですよね。
『やってみたらどうなるんだろう』ってずっと思っていて、それを実際にやってみるっていうことは、前から心掛けていました」
――会社員時代に、「好きなことを仕事にしたい」って思うきっかけはあったんですか?
和田「仕事がうまくできたからやっていただけで、うまくできなくなったときにつらくなったっていうのがあって。
うちの上の子がまだ小さかったときに、僕のパソコンでかちゃかちゃ2歳児がやっているわけですよ。
『なにやってるの?』って聞いたら、『お仕事』っていうから、『パパの仕事がなにか知ってるの?』って聞いたら、『知ってるよ、計算』って言ってて(笑)『いや、パパの仕事はね……』って言ったときに、自分でその仕事を説明できなかったんですよ。
計算じゃないと言ったはいいけど、なんだっていうんだろうって思ったら、そのときから仕事をサラリーマンとしてやることには疑問を持ちはじめた。
もともと天文学者になりたかったんで」
なんで君は自分のやりたいことをしないんだ?
――天文学者!?
和田「知り合いが、カナダの宇宙開発を担う組織の学者と結婚して、日本に来たんですよ。
スペースシャトルの耐熱タイルを開発した人だったんです。
その人に『実は天文学者になりたかったんだよね』って酔っぱらいながら話したら、『じゃあ、なんで君は天文学者にならないんだ』って言われて。
本物の天文学者を前にして何も言えなくて。
僕は何に興味があるのかなって思ったときに、自分の興味がある方向とか、関心のあるものっていうのは、『人間の能力を開放していくこと』だなって気づいて、やりはじめたっていう話です。
『おまえはなんのために仕事してるんだよ?』『なんのために生きてるんだよ?』という根源的な問いを突き付けられて、その結果、今みたいな仕事に興味があるってわかった」
――「人間の能力を解放していくこと」、つまり、人間は環境さえ整えば、もっと能力を発揮できるということですよね?
和田「組織の学習能力に僕は注目して、ここ10年くらい仕事をしています。
なんで学習に注目したかっていうと、1人の天才がいればいいのかもしれないですけど、僕は自分がそうじゃないし、世の中のほとんどの人が天才ではない。
普通の人たちが集まって天才になる、集合知みたいな組織が作れるとしたら、どういう方法があるのか?
それが知りたくて、ずっとこんな仕事をしている。
これ全然儲からない仕事なので、えらい苦労したんですけど、でもどうしてもやりたかったのでずっとやり続けていたら、
急にここ1、2年くらいでそういう風にやってほしいっていう仕事が来るようになってきて」

人に投資をすることは尊い
――「最近の若い奴は使えない」という言葉に代表されるように、組織は人間を成長させられなくて、苦しんでいますよね。
和田「前回お話しした『投資』(自分が持っている時間やお金を投入すること)っていう考え方に対する取り組みの不足があると思います。
人に投資するっていっても、今投資したら明日戻ってくる、くらいのことしか、みんなやらないんですよ。
一年後、二年後戻ってくるとかってみんな待てないし。ましてや十年後、あるいはいつ戻ってくるかわかりませんっていう投資ってそもそもしないっていう人が多くて。
人を育てるときって、その投資が戻ってくるって信じるけど、でも、自分が生きているうちには返ってこないかもっていう感覚でやれていないってことなんじゃないかなって思うんですよね。
返ってこないものには意味がないっていう風に考えちゃって、自分が見ているうちに成果が出ないものには意味がないって考えちゃう」
――人材育成ってそれぐらいの覚悟でやらないといけないものなんですね。
そこにいくと、オタクってある意味、好きなものへの投資はすごくできている状態ってことですよね。だから、本当はすごく伸びしろがある。
あるいは、投資の方向が偏っちゃっているから、別のところに投資したらマネタイズしやすいよっていうことですかね。
和田「投資をするっていう練習ができている人がとにかく少ないから、まずそれが貴重なんだってことが言いたい。
直接マネタイズができるかわからないけど、好きなことをつづけるためには、ビジネスにするっていうことがいちばんつづけやすいじゃないですか。
ボランティアとか趣味ですって言っちゃうと、やる人がいなくなった瞬間に終わってしまう。
価値がある、意味があることこそ、本来はビジネスにすべき。
そうすると誰かがつづけてくれるから。
つづけるという循環をつくる練習として、『投資先を変えてみようか』とか『自分の興味があるところだけじゃなく、ないところにも投資をしてみようか』とか。
時間とか手間とか、興味関心レベルでいいと思うんですけど、それをちょっと向けてみる。
そういうイメージですね」
後記
好きなことを仕事にしていない自分に気づいて転職し、失敗を重ねながらも少しずつ自分の好きな方向へと修正を重ねながら、事業を軌道に乗せてきた和田さん。
だから、自分の好きなことを仕事にするにはいろんな方法があると知っているし、好きなことを仕事にしたい人への大いなる共感を持っている。
そして、ここがいちばん教師として大事な資質なのだが、「人間は成長できる」ということに大きい信頼を置いているので、誰に対してもすごくあたたかい。
人に誇れる趣味を持っている人はもちろん、「自分はノーアイデアです」という人こそ気軽に参加してみてほしい。
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