top of page
検索
  • プロオタク講座事務局

【プロオタク先輩インタビュー】第1回「純喫茶コレクション」難波里奈さん




プロオタクとして活躍する先輩に、きっかけやら醍醐味やらコツやら訊きまくるインタビュー。


第1回は「純喫茶コレクション」の難波里奈さん。

同名のブログや著書、Twitterで、純喫茶マニアの第一人者としての地位を不動のものにし、いまも毎日のように純喫茶に通い詰め、発信をつづけています。

喫茶店への「常軌を逸した」愛情の深さは、学ぶべきところが大いにあります。



ブログは記憶のコレクション


ーー純喫茶を好きになったきっかけは?

難波「昭和の家具やインテリア、雑貨などが元々好きで、たくさん買いこんで自分の部屋をいちばんいい空間にしようとしていたんですけど、物を集めるのには限界があって。あるときに、『あっ、自分が喫茶店に行けば毎日部屋を変えるみたいにいろんな空間を楽しめるんだ』ってことに気づいて。昔ながらのお店に足を運ぶようになりました」


ーー本当に価値があるのって物じゃなく、それを感じている自分だったり、視点だったり、誰かに伝えるってことだったり。そういう形のないもののほうが大事だってことに気づいたのでしょうか?

難波「そうですね。ブログ『純喫茶コレクション』をはじめたときに思ったのが、喫茶店という空間や記憶は他の人とも共有できるので、記憶をコレクションしていこうということなんです。自分の見たこと、思ったこと、お店の人の一言とか、書いておかないと忘れちゃうようなことを、誰かのためじゃなくて、自分のため書いていったら後で読み返したときにおもしろいんじゃないかなと思って、記録することに夢中になりましたね」



あふれる「好き」を発信したい


難波「私の場合は、仕事にしようという思いからブログを始めたわけじゃなくて、自分の中の喫茶店に対する熱量みたいなのを持て余し過ぎて、なんでもいいから発信したいって勝手にブログを書いてただけで、最初の頃は誰かが見てくれているとは全然思っていなかったんですよね」


難波「でも、そのブログがPARCO出版の方の目に留まって。その方は美輪明宏さんのご担当でいっしょに書店まわり営業をしに新潟に行ったらしいんです。そのときに、煙草を吸える喫茶店が近くにないかと検索したら、たまたま私のブログが出てきた。少し読み進めていったところ、「喫茶店のことしか書いてなくて、頭がおかしい!」と思ったみたいで(笑)。『これをちょっと手直しして一冊の本にしませんか?』というお話を頂き、本(『純喫茶コレクション』[PARCO出版])になりました。一つ形になってからは、(他にもテレビや雑誌の仕事など)次々とお話しをいただくようになっていきました」



補修のためのガムテープすら愛しくて涙が出そうになる


ーー仕事をする上でのマイルールや、こだわりはありますか?

難波「ブログをはじめてからずっと一貫しているのは、行ったお店の悪いことは絶対に書かないということですね。喫茶店という存在ありきで私の活動は成りたっていますし、喫茶店が好きで好きでたまらないってことではじまったものでもありますので基本的には愛が前提なんです。

万人が好きなお店ってないじゃないですか。たまたま私が行った日に『いやだな』と思っても、毎日来ている常連さんはそんなことは1回もなかったって思うかもしれないですし。そういうことよりも、そのお店のここが素敵だったとか、とにかく好きなことを前面に出す。私はブログを見た人たちに行って欲しいと思って書いているので、よいことしか書かないです。そこに無理があるわけでもなくて。

喫茶店の中にある物は全て愛なんですよ。いいようにしか見えない。基本的に喫茶店に対してネガティブな感情を持つことがほとんどないので。たとえば、ソファーがガムテープで補強されていたりすることも、昔の高級なものを何十年も使いつづけているということですから、お店の人にとってすごく価値がある大切なものだったんだなと思って、そういう傷跡にすら、涙しそうになるんです」



まわりを気にせず自分の思ったままを貫く


難波「まわりのことを気にして、こういうことを書いたら評判がいいんじゃないかなとか、そういうことはあまりしないようにしていて。そのとき自分が伝えたいことを素直に発信して、いつも応援してくれる人たちが『今回はなんかちがったな』と思っても、それは一過的なもの。やっぱり自分のやりたいことや伝えたいことがぶれてしまうよりかは、自分の中で違和感が生まれないよう、あまりまわりは気にしないようにしていますね」



ずっと続けた人がいちばん強い


ーー好きなことを仕事にしたい人へのアドバイスを教えてください

難波「『ひたすら続ける』ということ、『好きを押しつける』ということ、あとは『やり遂げたいことがある時は、具体的に想像してまわりの人に言いふらす』という3つはすごく大事だと思っていますね。

『ひたすら続ける』っていうのは、なにかがブームになったときって、同じようなことをはじめる人たちが増えるんですけど、そのときに忙しさなどにかまけて純喫茶めぐりをさぼったりしたら、その分他の人の記憶コレクションのほうが充実してしまうかもしれない。でも、過去に私がやってきたことは私しか知らないし、閉店してしまったお店のことも当時訪れた人しか知ることのできない記憶なので、ずっと続けてきた人がいちばん強いと思います。空白ができてしまうよりも、淡々とひたすら積み重ねて、自分の経験や記憶など、情報を蓄積していくことが結果的に『あの人に仕事を頼もう』ってなるだろうなあと考えています」



「あの人、狂ってる」って思われたらバンザイ!


難波「自分がこうしたいとか、こういう仕事をしていきたいというのは、口に出していったほうがいいと思うんです。まわりの人に『こういうのがやりたくて』とか『◯◯さんと話してみたい』とか『ここの喫茶店の取材がしたくて』とか言っておくと、意外な人がつながっていたりして『難波さんが◯◯さんに会いたいって言っていたよ』と伝わることもあるので悪いことじゃないと思うんですよ。私はひたすらまわりの人に話しています。

やっぱりおもしろいと思われるのは、『あの人、狂ってる』ってところまでやることだと思うので、そう思われていてもいいやと思っていて。そういう意味で好きを押しつけていきたいです。嫌がっている人にはもちろんそこまで押し付けないですが、ちょっと興味があるよって顔したらすぐに押しつけていきたい」


難波「すごく尊敬している純喫茶の方が、決めた営業日は絶対に休まないし、臨時休業をしない、早く閉めたりもしないとおっしゃっていて。いつ誰が来たいと思っているかわからないし、わざわざ足を運んでくださったのに、閉まっていたらがっかりさせてしまうから、と。私たちの活動も、きっと走り続けるしかないのでは思っています。自分の気分でやめてしまったり、情報がある時期だけ抜けていたら、一貫した価値がなくなってしまうと思うので。これからも喫茶店に毎日行って毎日発信するということをやっていきたいです」



後記

自分にさしたる才能がないことに思い悩むときもある。

でも、才能がないからこそ、結局は積み重ねつづけるしかない、という結論になり、また走りはじめる。

私もそんなことを繰り返してきた。


思い悩む時間があるなら、前に進んだほうがいい。そう思っているのは私だけではなく、難波さんも同じだったのだ。

たったひとりで走っているように思えていたけれど、自分の好きなことに打ち込む人たちはみんないっしょに走っているのだ。

閲覧数:324回0件のコメント
bottom of page